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「ちゃんとスカート丈、短すぎって注意したじゃん。」 「フリル付けるだけの予算が無かったの!」 「たから、スコートを?」 「……そうだけど!」  まさかスカート捲りする奴がいるなんて思ってなかったと亜希が毒づく。 「あったま来た! 紗智に言い付けてやる。」 「――ゲッ。」  内田が顔を強張らせる。 「――神様、仏様、進藤様! それだけはご勘弁を。」 「じゃあ、クレープで目を瞑ってあげる。」 「よっしゃっ! 買います、買います!」  くすりと笑う亜希に内田は翻弄されっぱなしだ。  ――友達からの延長の恋。  それは簡単なようで、難しい。  「友達」という安定している関係を崩してまで、亜希との関係を変えることにどうしても躊躇してしまう。 (――情けないな。)  亜希を振った奴にちょっと感謝しながら、亜希の手を引く。 「内田、聞いてる?」 「んあ?」 「……聞いてなかったの?」 「悪い……。で、何?」 「あれ、やらない?」 「あれ……って?」  指差したのは校舎二階の窓に張られた「パンチングマシーン」だった。  その頃、久保はすっかり気落ちをしていた。  巡回に戻ってすぐに、校庭の露天で内田に手を引かれている亜希の姿を見付けて、凍りついたみたいに動けなくなった。  「彼氏を作って回れば」と言ったのは自分なのに、実際にその様子を目の当たりにすると、頭を思い切り殴られたみたいな衝撃を受ける。  ――ズキン。  胸が鈍く痛む。 (……俺が高校生なら。)  そしたら亜希の手を引いて、一緒に校内を回り、亜希の喜びそうな事を片っ端からだろうに。 (……どうして、傍に居てやれないんだろう。)  ――歯痒い。  枷にはなりたくない。  だけど、自分以外の男に笑いかけている亜希に苛立ってしまう。  久保はそれ以上二人の様子を見ていられなくて視線を逸らした。
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