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(こっちがトイレで、こっちがお風呂……。)  バスローブも置かれているのを見て、にんまりとする。  ベタついていた肌をお湯で、さっぱりと流したい。  ふわふわとした手触りのタオルを手にして、お風呂場のドアを開ける。  中は暖房が利いていて温かく、少し固めの蛇口を捻ると、熱めのお湯が亜希の体を温めた。  シャワーを頭から浴びる。  続けて湯槽にお湯を張ると、ドドド……という音がバスルーム内に響いた。  その水音に久保が目を覚ます。 「……亜希……?」  夢うつつで探っても、見当たらない。  ノロノロと起き上がる。  頭の髪をくしゃくしゃと触ると、水音に導かれるようにバスルームに向かった。  鍵のかかっていないバスルームに足を踏み入れる。  ちょうど髪を洗い終わった亜希が、シャワーを元の位置に戻そうと手を伸ばしている。  久保が入ってきた事には全く気付いていない。  そこでそっと手を伸ばし、片手でシャワーを受け取りながら、もう片手で叫びそうになる亜希の口を手で押さえる。 「ん~っ!」  しかし、久保だと分かると落ち着いたようで、ぎろりと睨んでくる。  にやりとしながら手を解くと、亜希は洗い髪から水を滴らせたまま膨れっ面をする。 「……ちょっと!」 「驚いた?」 「飛び上がるかと思ったよ。」 「――じゃあ、捕まえておかなきゃな。」  そう言ながら、抱き締める。  人肌が心地好い。 「……出てってよ。」 「嫌です。」  温かな腕に動きを封じられて、強く言えなくなる。  亜希の手からボディタオルを奪う。  ボディソープのポンプをポシュポシュと押すとタオルを泡立てて亜希を洗っていく。 「背中、流すよ。」 「自分で出来るって!」 「はいはい。」  タオルを奪おうとする亜希をうまく躱す。  擽ったがる亜希を、泡だらけにして楽しむ。  最後には亜希も負けじと、久保を泡だらけにする。 「まだ泡が鼻に付いてるよ!」 「なぬ……。」  朝っぱらから子どもみたいに、はしゃぐ。  湯槽の水面は滑らかで、二人で浸かると肌が触れる。  いつもより窮屈なはずなのに、その窮屈さが逆に心地よかった。 「今、何時かな……。」 「6時前くらいじゃないかな?」 「……じゃあ、そろそろ出なきゃ。お化粧しなきゃだし。」  久保は名残惜しそうにする。
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