記憶喪失

2/6
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
私は一体誰なんだろう。 眼を開けると、知らない場所に立っていた。 手には一刀の刀。 刀には鮮血が滴っていて、ポトリポトリと大地を紅く染めている。 嗅いだこともないような悍ましい香りが私を包む。 ふと辺りを見回すと、十人程の死体。 ピクリとも動かないそれは、私が殺ったのか…分からない。 私は誰?なんで刀を握っているの?この人達はなんで……? いくら考えても答えが見えてこないと悟った私は、取り敢えず刀を鞘に納め、歩いた。 少しでも、この地獄のような場所から立ち去りたくて。 知らない道を、我武者羅に歩いた。 やがて、小さな湖に辿り着く。 そう言えば、歩きっ放しで喉が渇いたなと思い、喉を潤そうと湖に足を向けた。 湖に顔が映る。 銀色に光る、長い髪。白い肌。大きな瞳。 へぇ…これが私か。案外ふつうの顔してるんだ。 喉を潤し、ついでに顔に付いた血を洗い流す。 シンとした空気に私はどう思ったのか、コテンと横になった。 直ぐに睡魔が襲って来る。 ああ…私、疲れてたんだ。自分の事なのに、全然気付かなかった。 自笑的な笑みを浮かべ、私は眠りに落ちた。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!