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私は一体誰なんだろう。
眼を開けると、知らない場所に立っていた。
手には一刀の刀。
刀には鮮血が滴っていて、ポトリポトリと大地を紅く染めている。
嗅いだこともないような悍ましい香りが私を包む。
ふと辺りを見回すと、十人程の死体。
ピクリとも動かないそれは、私が殺ったのか…分からない。
私は誰?なんで刀を握っているの?この人達はなんで……?
いくら考えても答えが見えてこないと悟った私は、取り敢えず刀を鞘に納め、歩いた。
少しでも、この地獄のような場所から立ち去りたくて。
知らない道を、我武者羅に歩いた。
やがて、小さな湖に辿り着く。
そう言えば、歩きっ放しで喉が渇いたなと思い、喉を潤そうと湖に足を向けた。
湖に顔が映る。
銀色に光る、長い髪。白い肌。大きな瞳。
へぇ…これが私か。案外ふつうの顔してるんだ。
喉を潤し、ついでに顔に付いた血を洗い流す。
シンとした空気に私はどう思ったのか、コテンと横になった。
直ぐに睡魔が襲って来る。
ああ…私、疲れてたんだ。自分の事なのに、全然気付かなかった。
自笑的な笑みを浮かべ、私は眠りに落ちた。
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