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「……ん……?」
あれ?此処は一体どこ?
私、さっきまで湖に居たのに…。
もしかして、あのまま湖に転げ落ちて溺死しちゃった感じ?
そうなると、此処は黄泉の国なのか。
でも、完璧ここ畳だし…布団の中に居るし…どう言う事?
眼を覚まして早々頭を絞る。
真新しい畳の匂い、襖から漏れる太陽の光り、柔らかい布団の感触。
此所が何処だか、全く検討もつかない。
すると、誰かの足音が此方に向かって来るのに気がついた。
思わず身体に力が入る。
「……なんだ、起きてんじゃん」
開かれた襖の向こうには同い年ぐらいの青年。
若草色の着物に白い襟巻きをした青年は後ろ手で襖を閉めると、腰を降ろす。
「大丈夫か?お前、湖の近くで倒れてたんだよ。」
別に倒れてた訳じゃない。力尽きて眠ってしまっただけだ。
そう言い返そうとしたけど止めた。理由は特に無い。
「着物は血塗れだし、浪士にでも追われてたのか?女なのに刀を持ってるし…。
でも、怪我は擦り傷程度だったから安心した」
ふっと微笑んでみせる青年。
綺麗に笑う人なんだなと私は思った。
「俺は春真。雨水 春真。お前は?」
私?私の名前なんて、こっちが聞きたい。
答えないでいると、春真が首を傾げる。
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