記憶喪失

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************ 「……ん……?」 あれ?此処は一体どこ? 私、さっきまで湖に居たのに…。 もしかして、あのまま湖に転げ落ちて溺死しちゃった感じ? そうなると、此処は黄泉の国なのか。 でも、完璧ここ畳だし…布団の中に居るし…どう言う事? 眼を覚まして早々頭を絞る。 真新しい畳の匂い、襖から漏れる太陽の光り、柔らかい布団の感触。 此所が何処だか、全く検討もつかない。 すると、誰かの足音が此方に向かって来るのに気がついた。 思わず身体に力が入る。 「……なんだ、起きてんじゃん」 開かれた襖の向こうには同い年ぐらいの青年。 若草色の着物に白い襟巻きをした青年は後ろ手で襖を閉めると、腰を降ろす。 「大丈夫か?お前、湖の近くで倒れてたんだよ。」 別に倒れてた訳じゃない。力尽きて眠ってしまっただけだ。 そう言い返そうとしたけど止めた。理由は特に無い。 「着物は血塗れだし、浪士にでも追われてたのか?女なのに刀を持ってるし…。 でも、怪我は擦り傷程度だったから安心した」 ふっと微笑んでみせる青年。 綺麗に笑う人なんだなと私は思った。 「俺は春真。雨水 春真。お前は?」 私?私の名前なんて、こっちが聞きたい。 答えないでいると、春真が首を傾げる。
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