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【成実】
それが二人が付けてくれた私の名前。
読み方は【なるみ】。すこし可愛らし過ぎる名前だけど、結構気に入っている。
けれど、私の性格がたまに男っぽいと、春真は時より私のことを揶揄って【せいじ】と呼んだ。
嫌な気もするけど、成る程と納得してしまう自分もいて、特に春真に言い返す事はなかった。
それと、私は十三歳と言う事になっている。
見た目こそ春真と変わらないものの、断固として春真が譲らなかったのだ。
『妹の理想は自分より二つ年下だ』とかなんとか言ってね…。
あれから三ヶ月程たち、季節は秋。
私は父様の手伝いをしながら、春真との他愛ない会話に花を咲かせる毎日を送っていた。
父様と春真は江戸の生まれらしい。
諸事情で此所…京の街で三年ほど前から暮らしているそうだ。
「成実…。ここはもう良いから、春真と街に行って来てくれ。買い物、頼んだよ」
最後の患者さんを看終わって、父様が言った。
私は掛けていた襷を解くと、一礼し部屋を出る。
「終ったか?…んじゃ、行こうぜ」
玄関で胡座を掻いて座っていた春真が欠伸をしながら立ち上がる。
春真はいつもの襟巻きを首に巻くと、籠を手に歩き出す。
「…えっと…墨、半紙に…あとは今日明日の食べ物か…成実、帰り甘味処寄ってこうぜ」
「うん」
甘い物には眼がない春真。
私は甘味が得意ではないけれど、美味しそうに甘味を頬張る春真が好きで、よく付き合っていた。
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