16人が本棚に入れています
本棚に追加
**********
買い物を済ませた私達は、お馴染みの店、【朝松屋】に向かった。
此処は春真一押しの茶屋で、品揃えが良くて、価格も手頃。
甘さ控えめなお饅頭が、私は好きだった。
「あら、いつもえろぉご贔屓に…ありがとね…」
店の暖簾を潜ると、朝松屋の女将さんがお盆を持って上品に頭を下げた。
何度も通ったせいか、すっかり私達は常連さんだ。
その所為か、ここの一人の娘の音々ちゃんとも、今では親友という間柄だ。
「音々ちゃん、昨日ぶりだね。元気だった?」
「当たり前やんか……たった一日で何に成れって言うんよ」
笑い合っていつものを頼むと、長椅子に腰を掛けた。
その隣に春真が座り、息を吐く。
「春真、如何したの?溜息吐くなんて、珍しいね」
顔を覗き込むと、春真は頬を掻いた。
そして小さく微笑んで、私と眼線を合わせる。
「すっかり元気になったと思ってな….。
ほら、初めて会った時のお前さ、喋らないわ、無視するわ……酷かったじゃん」
父上には直ぐ心を開いたってのに…と最後は聞き取りにくい程小さな声で呟く。
最初のコメントを投稿しよう!