3人が本棚に入れています
本棚に追加
「まあ、なんていうか。独特の雰囲気だよね」
取り敢えず校舎の中で活動している部活動から、というなこの提案で、二人は第一校舎に向かった。王崎商業は、校舎が三棟並列しており、第一校舎には職員室・保健室・パソコン室等商業科目で使用する特別教室、第二校舎には学年毎の教室、第三校舎には音楽室・家庭科室等がある。第一校舎で活動しているのは、毎年全国大会に出場するほどレベルが高いと評判の簿記部、ワープロ部、珠算部等だが、どこも部活動のイメージとはかけ離れていた。特にワープロと珠算に関しては、雑談をしながらキーボードを打つ指先の尋常ではない速さと、整然と並べられた机に向かってそろばんを弾くその光景にある意味圧倒されてしまい、二人は逃げるように教室を出てきたのだった。
「そう言えば、中学校は部活やってたの?」
「うん。ソフトボール部」
「へー! なんか意外。バスケとかのイメージあったんだけど」
「……嬉しくないような。嬉しいよう、な?」
「あ、言いたいこと分かるよ。女の子って激しいもんね。色々と」
「……なこちゃんは何部だった?」
「私はバレー部」
「じゃあ、高校はバレー続けるの?」
琴の問いかけに、なこは横に首を振った。
王崎商業のソフトボール部は、二年程前までこの学校に勤務していた女性監督の指導の下、地区大会の最下位争いから県ベスト4まで上り詰めた、とても活気のある部活動だったと聞いている。偶然にも、中学時代のソフト部顧問が、前任校で王崎商業と交流試合や合同練習を開いていたということで、三者面談の際にそんな話を聞かされたことを琴は覚えている。しかし、廃部になったのは二年前と言っても、実際はその前の年からは人数が足りずに同好会扱いになってしまい、当時の部員だった生徒たちも何とか部を持ち直そうと尽力したが効果はほとんど現れず、二年前に残っていた一年生が廃部を決意したという話も聞いていた。
最初のコメントを投稿しよう!