1354人が本棚に入れています
本棚に追加
その日は、とてもとても大切な用事があり、僕は急いでいた。そう、そりゃあもう、頑張って飛んでたんだ。
………それなのに!
突然の雷雨。
雷が、飛んでる僕に命中した。
………しばらく、気を失っていたらしい。
気がつくと、僕はびしょ濡れで、跳ねた泥で泥まみれ。ボロボロに焦げた服…という、最悪な状態で地面に転がっていた。
身体中が痛い。
白い翼も焼け焦げだらけだ。
呻きながら、覚えたての回復魔法を試みる。キラキラと美しい光が僕を包み、傷が癒えていった。
……良かった、成功して。
動けるくらいに回復した僕は、ヨロヨロと立ち上がり、空を仰いだ。
僕の目には、さっきの雷雨が嘘のような、爽やかな青空が眩しく映る。
ああ、僕は結構な時間、気を失っていたらしい。あんなにも、日が高い。悲しくなって、フラフラしながら近くの岩に腰かけた。
もう試験には、間に合わないだろう。
…あんなに、勉強したのにな…。
今日は、年に1回しかない、天使登用試験の日だった。もう5回落ちてるし、今回落ちたら家をつげ、って言われてる。
最後のチャンスだったのに、テストすら受けられないなんて…。
悲惨過ぎて涙もでない。
岩に座って放心する事、数時間。
泥まみれのまま乾いてしまって、服も髪もゴワゴワで気持ち悪い。それに、だんだん暑くなってきた。
こうしてても仕方ないし、帰るか…。
立ち上がりかけた僕の目に、何かがキラリと光るのが見えた。
なんだろう…?
ゴツゴツした岩の隙間に、宝石みたいなものがチラッと見える。…足場は悪いけど、行けない事もない。
バランスをとりながら注意深く進み、僕はその宝石みたいなものを拾いあげた。
すぐそばに、人の手が見えた気がして、ビクっとする。
その瞬間。
またも雷にうたれたような衝撃が走り…
僕は、また意識を失った…。
最初のコメントを投稿しよう!