空を飛んでただけなんだ…

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目が覚めたら、真っ白で四角い部屋に居た。粗末なベッドに、粗末な服。部屋の真ん中に、これまた粗末なテーブルと椅子。 起きぬけの僕の目に入ったのは、それだけだった。 …ここ、どこだ? 起き上がろうとしたら、体に痛みが走る。この固いベッドが原因か? 「…いてて」 思わず声がでた。 でも、この痛みのおかげで、これが夢でない事を実感する。 気を失う寸前に聞こえた、あの機械的な声… 『一定以上の知性を有する生体反応を確認。新しいマスターとして登録します。』 …あの言葉は、なんだったんだろうか。 暫くベッドに座ったまま、ぼんやり考える。 それでも、状況は何も変わらない…。 そろそろとベッドを出て、テーブルに近づくと、あの時拾った宝石が目に入った。 「もしかして…これのせい…?」 呟きながら宝石を手にすると、ブゥン…という振動が手に伝わり、危うく落としそうになった。 『おはようございます。』 「うわっ!?」 宝石から聞こえてきた声にビックリして、また落としそうになる。 なに!? なんなの!? 慌てふためく僕と対照的に、宝石から流れる声はいたって冷静だ。 『ダンジョンマスター権限獲得後、最初のアクセスとなります。初期説明を聞きますか?』 …とりあえず、何がなんだか分からないし、説明してくれるってんなら、何だっていいから聞きたいかも。 僕は、コクコクと頷きながら、宝石に話しかけた。 「おっ…お願いします!」 ………そして1時間程の後、僕は机に突っ伏して、泣いていた。 だって…あんまりじゃないか…。 僕は神様の下で、平和と秩序を守る有翼の軍隊に加わるため、天使試験を受けようとしてたのに…。 僕は、あの宝石をうっかり拾ってしまったばっかりに、「ダンジョンマスター」とやらになってしまったらしい。 ダンジョンを作って、モンスターを召喚、使役し、秘宝を狙って来訪する冒険者達を殺すって…… それ、悪魔の仕事でしょう!? 最悪だ…。 メソメソと泣き続ける僕に、宝石は無情にも、選択を突き付けてくる。 『前ダンジョンマスターからの引き継ぎダンジョンポイントが、2015DPあります。また、引き継ぎボーナスとして1000DP、もしくはレアモンスター召喚チケットが付与されます。どちらを選択しますか?』 「…そんなの、どっちがいいかもよく分かんないし…。」 単に愚痴ったら、宝石は律義に答えてくれた。
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