空を飛んでただけなんだ…

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そして思いあたる。 この宝石を拾った時に一瞬見えた、手…あれが、前ダンジョンマスターだったのかも知れない。 『それでは、還元しますか?』 「還元…?還元されると、どうなるの?」 『死体は分解されて土に還り、ダンジョンポイントが増えます。』 「そうか…。お願い。」 見ず知らずの前ダンジョンマスター…。 君もこんな、逃げられない気持ちだったのかな。僕もあんな風に、命を落とす日が来るんだろうか。 リアルに怖い。 『還元により521DPを入手しました。』 前ダンジョンマスターを還元するという、僕にとっては衝撃の選択を迫られた事によって、漸く僕にも現実感が出てきた。 嫌だろうが何だろうが、ダンジョンをちゃんと造って身を守らないと、ああして骸になるんだ。 そして運が悪いとアンデッドにされちゃう事もある。僕なんか運悪いし、アンデッドの確率の方が高かったりするかも知れない。 改めて、自分の手持ちの武器を確認する。 元々引き継いだのが2015DP、還元で得たのと合わせて2536DPと、レアモンスター召喚チケット1枚。 …これが、僕の命綱だ。 「この、DP…ダンジョンポイントで、ダンジョンを生成したり、トラップや宝箱を置いたり、モンスターを召喚したりするんだよね?」 さっき宝石に聞いたばかりの知識を、確認してみる。 『はい。他にバス、トイレなどの生活空間の構築や、食べ物や装備などを用意できます。カタログからお選びください。』 テーブルの上には、いつの間にかどでかいカタログが置かれている。 生活空間か。 そうだな。まずは泥だらけの体をスッキリさせて、しっかり食べて、頭が働く環境にしよう。 ダンジョンは一ヶ月以内に解放すればいいって、宝石も言ってたし、時間はまだある。 カタログをペラペラ捲るとデザインも機能も様々な、お風呂やトイレ、キッチン、ソファー…ありとあらゆるものが載っている。 うわぁ…目移り… してる場合じゃない! 生活に必要な設備がパックになった10Pのセットを召喚し、僕はお風呂に入った。 髪と体をいい匂いのソープで洗い、温かな湯船に身を沈める。翼まで温まってくると、安心して少し元気が出てきた。 気持ちいい……幸せ……! うん、頑張れそうな気がする。 お風呂からあがって、身も心もスッキリした僕は、召喚チケットから使ってみる事にした。 ゴハンも誰かと食べた方が美味しいもんね!
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