ハーデンベルギア(後編)

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  「ハ……」 1人になって、ようやくため息を吐くことが出来た。 ……私、何してるんだろ。 年下に混じって学ぶことの何が恥ずかしいの?って、言い返してやればよかったのに。 ――言い返せればいいのに。 年下の子にチクチク言われてへこむ私って……。 面倒ごとは嫌いなくせに、何か楽しいことはないかと探してる。 もう大人だって自分に言い聞かせながらも、大人に見られることに違和感を感じて。 何のために生かされたんだろうと問うのに、何かに必死になるのが怖い。 ……矛盾してるな。 「あの、お会計いいですか」 「ありがとうございます」 「あ、袋はいいです。ここに入れます……」 「ありがとうございましたっ」 本屋の店員さんの歯が眩しい。 「ハー……」 教科書2冊ぶん重くなった手提げカバンを肩にかけ直して、大きく息を吐きながら空を見上げた。 ……重い。 久しぶりに心が重たい。 鉛とまではいかないけれど、腰にロープを巻きつけてタイヤを引きずっているみたいな心境。 これは心の中に起きた“変化”になるんだろうけど、全然嬉しくない。 同じ変化が起きるなら、心が弾むような出来事がいいに決まってる。 その方がずっといい。 ……あったら素敵だね。 子供の頃、体を気にかけながらもよくしていたスキップは、いつからやってないっけ。 今ならおもいきり出来るのに。
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