ハーデンベルギア(後編)

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  「あ」 交わる視線に私が固まっていると、その人は無機質な声を発した。 自分の他にここを利用する人はいないと勝手に決めつけていた私は、急な展開に思考回路が停止する。 えーと……。 ベンチの端に山積みにされた本。 眠たそうな目をして見つめてくる人。 もさもさの髪に、前髪は目に刺さりそう。 事態を把握しようと、私の思考回路は徐々に回り始める。 「……人が来た」 その人はそう言って、珍し、と言葉を付け加える。 思考回路がうまく働かないまま私が次にとった行動は――。 ――ガチャン 私は静かに扉を閉めると、少しだけ速くなった鼓動を落ち着かせようと胸に手を添える。 ……え? 屋上に居た時間は1分程度。 私はその場から立ち去った。
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