お龍と太郎

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晴信は何処と無く寂しげな顔をして言うと愛馬を走らせて闇の中へと消えて行く。 晴信は豪傑過ぎる父を駿河へ追いやった事はいか従無いと思っても心の何処かで気持ちが晴れていなかった。 更に父を追放すると村上義清の様に武田家に敵意を持つ者が現れ甲斐信濃の平和を願っても理解されず苛立が晴信を苦しめた。 そんな状況の中で晴信は強がって精神を正常に保とうとしていた。 一方お龍は霧のかかった温泉で心を癒しくつろいでいた。 ひひぃ~ん! 馬の嘶く声が聞こえるお龍は目を細めて霧の奥深く見つめた次第に馬の姿がハッキリとしだす。 『春太郎』 お龍は嬉しいやら恥ずかしいやらで顔を湯船の中に沈めた。 「お龍ではないかまた会ったな」 春太郎こと太郎はニコニコしながら馬を降りると着物を素早く脱いで湯気のたちこむ温泉へと入って来た。 馬は太郎を降ろすとお龍の愛馬白夜の側に歩み寄り仲良く草を食べ始めた。 「ちょっとあんまり側に来ないでよ」 「あはは照れるなお互い裸を見せ合った仲ではないか」 お龍は詰め寄った太郎から少し離れるが太郎はお構いなしにくつろいで息を吐いた。 無言のまま時が過ぎて行く。
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