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お龍は悲願な顔をする訳でも無く黙って太郎の話を聞いていた。
「お前は大丈夫なのか?」
「何が?」
太郎の言葉にきょとんとするお龍。
「年頃の娘がこんな遅くにこんな所で呑気に温泉に浸かってるから」
「ねぇ~」
お龍は太郎の話をはぐらかす様に指を組んで前に突き出し背伸びをする。
「こら俺の話ばかりでズルいぞ」
お龍は屈みながら進み岩場に両腕を付いて夜空を見上げた。
「私は幼い頃からお寺に預けられていたの」
お龍はポツリと呟き太郎は黙って話を聞いている。
「兄が死んだり色々あってどうしても家に帰りたくなってね.....」
お龍の話はそこで終わってしまった太郎は後ろから軽く抱きしめた夜空に流れ星が一つ流れる。
「お互い辛いな」
太郎の言葉に軽く頷くお龍この時二人は敵同士として戦を繰り広げる事になるとは夢にも思わなかった。
太郎の唇が優しく頬を伝うお龍は顔を向けて二人の唇が触れ合った。
「お仕舞い!」
「おいこれから良いところだろう」
お龍は腕をすり抜け太郎が愚痴を溢す。
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