想い人と想われ人

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12月に入ると越後はすっかり雪に包まれて他国からの往来もめっきり減るにぎやかな城下の声は雪に吸収されて静まり返っていた。 そんな静けさの中春日山城内をばたばたと走る家臣がいる斉藤朝信である。 「殿~!」 叫び声に似た声は城内に響く 「五月蝿いわい!」 襖が激しく開いて定満がどなった朝信は通り過ぎ様に振り返った。 「朝信ではないか?」 定満は驚いた。 朝信は豪傑な武将として名を馳せて居たが本業は医者である従って廊下を取り乱して走る等珍しかった。 「定満様これを!これを!」 朝信は手にしていた手紙を定満の前に出した。 「誰からの手紙じゃ」 定満は冷静に手紙を受け取る。 「ば.幕府からの!足利様からの手紙です!」 「なんじゃと!」 朝信の言葉を聞いて定満も興奮した声を発した手紙には長尾景虎を正式に当主にすると言う内容が書かれていた。 「おう~!これで政景殿も納得するじゃろ」 定満の顔から笑みが溢れた。 「早く景虎様に」 「おおそうじゃな」 二人は景虎の元へ向かった。
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