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「今は本家の上杉様の所が大変な事になっておられます.....」
「わかっておるわ!」
定満の言葉を最後まで聞かずに不貞腐れて言った。
「いいえ!分かっておられません!」
定満は的外れだが景虎の心中を分かっているつもりで心を鬼にして厳しく言うのであった。
上杉家の大変な事とは本家の当主だった上杉定実が死去してしまうという事件が起きた。それにより上杉家は事実上断絶となってしまう。
景虎の兄いや養父の晴景は定実の娘を嫁にしているので後継者ではあるが国政より芸事を好む故、一部では景虎を後継者にと話が持ち上がっていた。
そんな最中での行動である定満じゃなくても景虎を引き留めたいのが心情である。
「政景様が又動き始めたのですぞ」
「爺ぃ私が政景だったら同じく景虎とか名乗る奴の命ねらうわ」
「な.....何を申される!」
「爺ぃは政景殿を毛嫌いし過ぎてるだけじゃ.....」
「.....」
景虎は親族が争う事を寂しく思い定満はその景虎の優しさに何一つ言葉を返す事が出来無かった。
二人はしばし見つめ合うすると何処からともなく鐘の音が城内に響き渡り景虎は唇を噛んだ。
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