お龍と太郎

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「そう怒るな素直に名前が知りたいだけだ」 「人に訪ねる前に自分から名乗るのが礼儀だろう」 景虎は精一杯の強がりで相手の言葉を手玉に取ろうとしたが男は参ったなぁと言わんばかり苦笑いで頭を掻いた。 その態度が景虎の神経を逆撫でさせる 「はる....太郎だ」 男は晴信と言おうとしたが幼名の名を思い出して言った。 「教えたぞお前の名は何と言う」 「た.龍.お龍!」 景虎はとっさに思い立った名前を言ってしまった。 「おたつか良い呼び名だ!でどういう字だ」 「りゅうと書いてお龍」 景虎は両腕をバッテンに組んで胸元を隠し睨み付けながら答えた。 男の名前は晴信幼名を太郎と言うそうのちの武田信玄であるこれが上杉謙信と武田信玄の初めての出会いだった。 「また何処かで会おうぜ!」 太郎は奥に繋いでいた馬を引き連れ股がりながら言った。 「あぁ~そうそう言い忘れたが此処には俺が先にいたんだぜ」 太郎はニッコリ笑うと馬に鞭を入れる馬は嘶き闇の中を走り出した。 「何よアイツ!」 景虎ことお龍は膨れっ面の頬っぺたで呟くとプクプクと音を立てて顔半分を湯に浸けた。 二人の戦いに勝敗を付けると先ずは信玄の一勝であろう
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