お龍と太郎

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景虎は春太郎、春太郎と言っている自分に恥ずかしくなって話を終わらせ様と怒鳴った。 「爺ぃの話は春太郎等と得たいの知らない奴の話じゃ有りません」 定満は少し強張った顔で言う景虎は違う話かと安心した。 「本家の上杉定実様の低調により景虎様が長尾家の当主と成りましたが」 「政景のことか?」 「左様で」 長尾政景は長尾家の家督に女である景虎がなった事が面白くないと不満を抱いていた。 「まぁ政景の気持ちもわからん訳じゃ無いが.....」 景虎は足を大の字に開き両腕で体を後ろに倒れない様に支えて言った。 姫として生きていたならば『はしたない』と怒られる処だがお転婆な姿に惹き付けられる者も少なく無かった。 「景虎様の命を狙ってると言う話も御座います」 狙わせとけと言わんばかりに定満を睨む景虎。 「夜な夜な御出掛けになるのは控えた方が宜しいかと存じ.....」 「大きなお世話じゃ!」 景虎は怒鳴ると一室から勢い良く出る襖が大きな音を立てて庭の鹿威しがカタンと一つ鳴った。 「やれやれ」 定満は微笑して呟く。
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