力太郎

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「力太郎!」 力太郎の部屋の前で、喜勢川が呼ぶが応答がない。 手前の大部屋から、駒の秀が顔を出した。 「勝関なら、さっき出ていきましたよ。」 喜勢川は、頭を掻いた。 「秀さん、どこ行ったかわからんよな?」 駒の秀は、37歳の喜勢川より2才年上だが、未だ力士だ。十両まで上がった経験はあるが、相撲好きで今は三段目で現役である。 駒の秀が首を傾げた。 「さあ、わからないですね。着いて行こうとしたんですけど、一人で行くと言って出ていきました。」 駒の秀にとっては、喜勢川が年下ではあるが、喜勢川の方が早く入門し、駒の秀のはるか上の番付だった為、敬語である。 力太郎の付け人ではあるが、スピード出世の力太郎のしつけ役のようなものだ。 喜勢川は頷いた。 「秀さん、明日から鹿児島だろ?」 と、喜勢川はお金を少し渡した。 駒の秀は頭を下げた。 「すいません、オヤジの体調が悪いみたいで・・・」
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