決起

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「おっと悪りぃ、・・えっと・・・?橘?だったよね。クク・・」 目の前の男はわざとらしく笑うと、仲間たちの待つ教室に入って行った。 「橘ってホント【地味】だよね・・くすくす」 「あ~ダメダメ、地味なんだから、存在は消しておかないと」 背後で群れを作る少年少女からの嘲笑に歯を食いしばるが、だからと言って何もできない自分にも腹が立った。 そのまま教室を出た俺の横を、担任が横切って行った。 「ハイ、座った座った。お前ら早くしろ!帰りたくないのか?」 そう言って、さも俺がいないのが当然のように、担任はHRを始める。 そう・・・。 俺は・・・地味だ。 凄い特技があるわけでもなく、運動神経がいいわけでもなく、頭がいいわけでもなく、口数が多いわけでもない。 こんな人間の事を世間一般では何と言うだろうか? 答えは・・・【地味】だ。 入学してから、この 橘(たちばな)帝(みかど) が発言したのは、自己紹介の時と、やむおえなく喋らなければいけない時だけだ。そんな事をしていれば勿論、皆離れていくに決まっている。 何故そんな自業自得をしたのかと言うと、これにはちゃんとした理由がある。 俺は・・・コミュニケーション能力がない。 こう話しかけられたらどう返すとか、こんなこと話題に持ち掛ければ盛り上がるとか、とにかくそう言うことが瞬時に考えられない。結局色々考え込んでる内に、無視と判定されてハイ、お終い。 無口ならば、運動能力の良さで補えるのでは?とも思うが、そんなクールな男子には成れない。一応陸上部所属だが、周りが速すぎて対して目立たない。 このままでは中学校生活が一生地味で終わってしまう!!と言う中二の春である。 俺は、この事で最近ものすごく悩んでいたが、ある一つの答えを出した。 それを今、この玄関の戸を開けたらぶっ放そうと思う。 「お帰り帝ー」 「母さん!俺、引っ越したいッっ!!!」 「・・・はッ?」 当然のようなリアクションが返ってきた・・・・。
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