あの町へ

2/7
前へ
/7ページ
次へ
(ずいぶん変わったな……) 僕の記憶の中にあるこの町と、今、目の前にある町はずいぶんと違っている。 僕は、まるで間違い探しでもするかのように、記憶の中の町を今一度思い浮かべる。 生まれ育った町と同じように思い出深いこの町…… もう二度と来ないつもりだった…けど、いつかは来なくてはならなかった町…… 変わったとはいえ、すべてが変わったわけではない。 だから、目的の場所に向かうにも迷うことはない。 道はほとんど以前のままだ。 ただ、その周囲に建っているものが違っているだけ。 まだ新しい小洒落たマンション…そこには以前何が建っていたのか、考えても思い出すことが出来ない。 僕が良く買い物に行ってたなんでも屋は、シャッターが閉められたままだった。 あの雰囲気では、きっともうだいぶ前から営業してないんだろう。 あそこのおじちゃんもおばちゃんも、もうけっこういい歳のはずだ。 体力的に、店をやるのは辛いのかもしれないな。 そんなことを考えながら 僕は、切なさと愛しさを噛みしめ、懐かしい町を見渡しながらゆっくりと歩いた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加