あの町へ

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* 僕は指で涙を拭ってその場を離れ、もう一つの場所へ向かった。 千穂が幸せなことはよくわかった。 じんわりと温まった心と共に、このまま帰りたい。 だけど、そうはいかない。 あそこにはどうしても行かなければならない。 そのために、僕はこの町に来たんだから…… (……やっぱり、辛いよ。) 向かい風に抗うかのような気持ちで僕は無理矢理足を進めた。 着いたその場所は、あの頃と少しも変っていないように思えた。 誰も気に留めることのない、ごくありふれた風景だ。
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