朝はもうすぐ

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 頭が混乱している、混乱しすぎて思考力が低下している。  友人は先に行ってもいいって言った。  先に……  いいのかな、先があると思っていいのかな。  言われた言葉が耳から脳へ入り、そこからは先は小さい欠片になって身体の隅々まで広がっていく。そんな感じがする。  拾い集めて否定する気力がない。  ちゃんと考えたら色々不安が湧いて出そうだけど、考えられない。いや、考えたくない。 「だから帰ろう」  ぼおっと見ていたら、友人が決まり悪そうに目を反らした。  耳がほんのり赤い、いつのまにか頬も赤く染まっている。  期待も希望も持ってよかったことない。今まで確かにそうだった、しっかり思い出せているのに、気持ちがふわふわして立ち止まり考えることをしない。  学習能力の足りない自分は目の前で赤くなってる友人に全部もっていかれてしまったみたいだ。 「……うん」  喉の奥が絡んでうまく言えなかった。  友人はホッと息をつくとオレの見ていた雑誌を閉じて立ち上がった。  カウンター隣のラックに雑誌を戻すとそのまま自動ドアまで行ってしまう。  慌てて後を追った。  ちらりとカウンターを見ると柱時計が目に留まる。三時半を過ぎていた。  店内から一歩外に出ると頬が痛くなる。冷気が身体を包む。 「あれ、もう雪、やんでる」 「あー、さっきまで降ってたけど」  友人の隣に並ぶと友人はオレにちらりと目を遣り、歩き始めた。
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