宝物は腕の中

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 井戸は店長が好きなんじゃないかとひそかに思う。  店長に接するときの顔が違う。態度も違う。  でも店長は井戸を可愛がってはいるが、特別ではない気がする。  奥さんも子供もいる人だ。  他人の気持ちの真実は、誰一人知ることが出来ない。  もし聞いたところで出た言葉が真実かどうかも分からない。  そんな分からないものを何とか、手探りで繋ぐのが情なのかなと思う。  気持ちの方向がお互いを向くことなんてそうあることじゃない。  今、自分と恋人の間に奇跡みたいなことが起こっていると思う。  大事にしたい、そうしたいと思う。  そう思うのだけど…  お互いが思う付き合う形は同じなのだろうか。  どこまで自分に求めてるのだろうか。  どうしたいのだろうか。  聞いた方がいいのかなと思いながら気持ちの逃げる隙間みたいなものを作っていた方がいいような気もする。
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