宝物は腕の中

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   ようやく解放された三時半、店を出ると後ろから佐々木が追いかけてきた。   「おつかれ」 「……お疲れ様です」    横に並んだ佐々木はにこっと笑い「この時間怖いからそこまで一緒に行っていい?」と聞いた。  頷くとホッとしたように頬を緩め、ちらちらとあたりを見回した。   「この間からなんか見られてる気がして……」 「……それ、大丈夫なんですか?」    気のせいかもしれないしと無理に笑う佐々木はまたあたりをキョロキョロと見る。   「あがり、早くしてもらった方がいいんじゃないんですか?」 「うん、話してみようかな」    何かあってからでは遅いと思う。みようかな、なんてのんびり言ってる暇はないだろうに本人は黙り込んでしまった。  沈黙のまま歩く。   「佐々木さん、家、どこですか? 送ります」 「え? ……いいよ、そんな迷惑かけられない」    遠慮しているのかもしれないし、俺が嫌なのかもしれない。  それ以上言えなくてまたしんと静まる。
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