宝物は腕の中

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 いつもは、昨日は、横に転がって寝た。  でも今日はそうしたくない。布団を剥ぐってそこに入り込んだ。  起こしたくはないけれど抑えられなくて後ろから寝ている恋人を抱いた。  胸に引き寄せた恋人の髪が顔に当たる。  猫毛の柔らかい感じが気持ちよくて頭に顔を押し付ける。  自分と同じシャンプーのはずなのに、違う匂いに感じる不思議。  同じ男なのに肩や腰や足が柔らかく感じる不思議。  腕の中の不思議をぎゅっと抱きしめる。  改めて自分はこうしたかったんだと感じる。  距離が無くなって、恋人の熱が知れた。寝ているのに自分より冷たい身体だった。  隙間はいらない。  逃げる隙間はもうない。  じれる自分の熱さが腕の中に移ればいいとまた強く抱き締めた。    END
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