宝物は腕の中 昭介視点

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 宝物は腕の中 おまけ   自然呼吸を装い寝たふりを続ける。  まだ鼓動が早い、こんな状態で眠れるわけない。  本当は眠ってしまいたかったのだけれど。  ギシっとベッドが軋む音がして、背後に人が座った。  自分は壁を向いて寝ているから人ひとり寝るには十分なスペースはある筈だ。  初めてここに泊まった時、寝顔を見られるのと、同じ布団にいると思っただけで色々良くない反応を示しそうな自分が嫌で、壁を向いて寝た。  それが始まりで今もそう。  習慣になってしまっている。  背後の体重が重いからかスプリングが悪いのかは分からないけれど、一人分の重さへこんだベッドが自分も少し動かした。  いつも通り横に転がってすぐに寝息を立てるのかと思ったのに、今日は違った。  いやに近くで横になった和也は真後ろに寄ってくると枕と肩の隙間に腕を伸ばし自分を抱き寄せた。  心拍数が激増して息が荒くなる。  自分は寝ている人なのだから寝ているなりにしなくちゃいけないのに、何度も強く抱き締められいろいろ限界だった。
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