宝物は腕の中 昭介視点

3/27
前へ
/151ページ
次へ
「お、おかえり……」  自分の、荒い息遣いが気になって小さく言った。  今までこんな事、されたことが無かった。  付き合ってもう四か月近く経つけれど、今まで一度だって……  なんで、どうして今日?  やっと踏ん切りをつけたところだったのに、と思う。 「ん、起きてたの?」   頭の上にあった顔が首筋に下りてきた。  鼻を押し付けられてぞくぞくする。  こんなに甘く囁くんだ。  初めて知った和也の声は掠れていてオレの涙腺を弛めた。 「や、やめて」 「ん……いや?」  喋ると息がかかって更に身が縮まる。 「い、いや……」  和也の腕が弛んだ。  その隙に逃げて身体を起こした。  和也を見たくなくて壁に顔を向けた。
/151ページ

最初のコメントを投稿しよう!

854人が本棚に入れています
本棚に追加