宝物は腕の中 昭介視点

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「なんか疑ってるみたいだけど、俺は好きな人がいるから誰と一緒に居ても関係ない。ただその時一緒に居るってだけだ」  生え際を撫でる優しい指を止めたのは自分で、上げた目に映る和也はただ真っ直ぐ自分を見ていた。 「おい、誰とか聞くなよ」 「……だれ?」 「おい、」 「おしえて」  呆れたように目を丸めて和也はため息をついた。  そしてまた髪を撫でる。 「そんな顔するなよ。俺誰と付き合ってるの? 昭介だろ?」 「……あ、イタッ」  髪を撫でていた手が、頬をぎゅっと抓った。  痛いってことは現実だな、手が離れた頬を撫でながら思う。  好きなのか、そうか。  確かにそうかな、と思う。以前、一緒に居たいと言ってくれていたから。  でもオレにはやっぱり分からない。  付き合ってはいるけれど、オレたちの関係は他の恋人同士とは少し違うと思う。  友情の延長線上にある、恋愛とは言えないどこかに自分たちはいる、そんな気がする。
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