宝物は腕の中 昭介視点

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「……重いよ」 「うん」 「……で、出来たね」 「うん」  抱き締められる腕にぎゅっと力が入って首筋を吸われた。こそぐったくて気持ちがいい。  よかったと呟いた。こういう風になれてよかったの意味だったけど、首に顔を引っ付けていた和也はむくっと起き上がり「気持ちよかった?」と聞いた。  きっと違うと分かっていたけど「うん」と笑った。  胸の上に手のひらを重ねその上に顎を乗せてオレを観察するように見ていた和也はふにゃりと笑う。 「もう機嫌直った?」 「え?」  機嫌……悪かったっけ? 「もう別れるのは無しでいいんだよな?」 「あ……うん、ごめん」  そうだ、そうだった、あんなに悩んだのにすっかり忘れてしまっていた。  ホッとしたように和也が息をつく。 「俺の方が昭介より好きが大きいって分かった」 「なんで? そりゃオレの方が」 「俺なら別れるとか口に出したくもない」  これは……ちらりと窺う間近の顔は微笑みを浮かべてはいるけれども、これは……これは責められている。
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