朝はもうすぐ

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 なかなか寝付けない。それでもようやくうつらうつらし始めたとき「あれ、本当に新谷にするの?」と背中の向こうに小さな声が聞こえた。  目を開けると真っ暗になっていた。 「冗談だよ。するわけないよ」 「そうか、あれはしないほうがいいよ、本気にしたらまずいし」  壁を向いていた身体を仰向けに戻す。肩が触れた。 「うん」 「だいたいあんな事を、」 「うん、もう、だからしないって、」  お説教臭くなってきたので慌てて口をはさむ。 「それならいいけど」  触れてる肩が落ち着かなくて友人の方を向く体勢に身体を動かして離した。 「固まってたね」 「あたりまえだろ? あんな事友達にされるとは思わなかった」 「ごめんね、ちょっと酔ってたのかなぁ、もうしないから」  友人は口をつぐんだ。部屋がしんと静まる。オレは身体を壁に向けた。  さっさと寝ていればよかった。  固まっていたのはびっくりしたからで、赤ら顔は怒っていたんだ。  ほらやっぱり。落ち込むのは分かっていたことだ。
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