朝はもうすぐ

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「俺だから良かったけど、他の奴だったら」 「だからもうしないって」  ため息混じりに呟く。 「昭介がああいうことしたら勘違いする奴、ぜったいいるから、」 「だから冗談だったって、ごめんって、」 「ホントびっくりした、もう絶対するなよ」  確かに驚いたと思う、でもこうしつこいと心底不快だったと言われているようで悲しい。 「分かってる」 「誰にも、」 「分かってるって、うるさいなあもう」  もう寝よう。今日の友人はうるさい。  まあ自分がおかしなことをしたのが悪いのだけれど。   「……昭介、寝た?」 「……」 「ごめん、なんか俺もしつこいな」  友人はなおも話しかけてきたがオレは無言を貫いた。  そのうち友人は諦めたようで、大きくため息をついて布団を肩にかけた。  きっといつか、自分を受け入れてくれる人と出会えると強く思う。  今が辛いならば、そのぶんこれから訪れる幸せが何倍にも増しているはずだ。  いいんだ。だから今はいいんだ。  ずっと好きだった人の隣にいるんだから。  そう思うのに涙がほろほろ出てくる。  絶対に気づかれたくないけれど、肩が震える。  どうして報われないのに気持ちを捨てられないんだろう。  こうして隣の席に鎮座しているからかもしれない。  好きだから近くに居たい  好きでいることが辛いから離れたい。  今まで近くに居たい気持ちが強かった。  離れるのはもっと先でいいと思っていた。  でももう限界かなあ、と思う。  いま、声を殺して泣いているから。  
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