朝はもうすぐ

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 避けているわけではないけれど、この一週間、友人に会っていない。  会おうと思はなければなかなか会わないもんなんだなんてのんびり思いながらふと外を見ると雪がちらちらと落ちてきていた。  どおりで寒いはずだとオレは肩を震わせた。 「藤谷くんそろそろあがりね、ごめんね、遅くなっちゃって」 「はーい」  ちょうど返却分のクリーニングが終わったところだった。今日は30分の延長かぁと思いながらDVDを棚に戻し、大仏様のような顔つきの店長に「お疲れ様でした」と声を掛ける。  従業員の更衣室は暖房の効きが悪くてこの時期着替えが辛い。  手早く帰り支度を済ませ外に出るとひゅっと冷たい風が吹き、髪の中まで冷たくなった。  今から二回も電車に乗らなきゃならないかと思うと気が滅入る。  駅に一番早く着く道は大通りから一本入った街灯も疎らな道だ。  暗い夜道の先に人影が見える。  少し進んだところでそれが顔見知りだと気がついた。 「あ、新谷くん」 「藤谷君、あの、お疲れ様」  これがいわゆる、ストーカー、なんだろうか。
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