朝はもうすぐ

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「もしかして、和也が好きなの?」    新谷は急に立ち止まって口をパクパクさせた。  どうやら図星だったようだ。  新谷が見ていた人物はオレじゃなくて隣の友人だったんだ。 「そっか。いいよ隠さなくても。誰にも言わないから」 「……藤谷君も、好きだよね?」  歩き出した新谷がオレに小さく聞いた。横を見ると穏やかな眼差しで新谷がオレを見返していた。 「うん」  オレが空を見上げると新谷くんも見上げた。  冬の澄んだ空に星が無数に光る。 「やっぱ、分かる人には分かるよね」 「うん。僕も勿論口外はしないよ。藤谷君がライバルじゃなければいいなって思ってはいたけど」  新谷は苦笑いで「里見くん、格好良いからなぁ」と呟く。 「ライバルっていうか……オレはちょっと疲れちゃってるからなぁ」 「疲れた?」 「うん、」 「そっか」  新谷はその後一言も喋らず、オレも同じく一言も喋らなかった。  
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