朝はもうすぐ

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「えー違うよーー」 「俺には隠さなくていいから」 「だから違うって、新谷君もオレも、他に好きな人がいるから」  発泡酒の残りをぐぐっと飲み干した。  どうやら兄にでもなったつもりで友人はオレの事を心配しているようだ。ちらっと友人を見上げると、目を見開いて固まっていた。せっかくのケーキなのに味がしなくなった。 「だれ? 俺の知ってる人?」 「ん、教えない」 「もしかして、彼女出来た? だから俺は最近昭介に振られているの?」  色めいた声の友人の目が輝く。胸が痛い。 「違う」  友人はいつのまにかこちらに身体を向けた。オレはその友人に背を向けて、 ケーキの皿を抱え食べ続けた。 「なんだよ、俺には言えないの? 知ってる人?」  言えない、言いたくない。絶対に。オレは無言を貫く。 「誰なんだよ、教えて」
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