朝はもうすぐ

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「嫌だよ」 「聞けば協力できるだろ? 俺の知ってる人なら岡島さんとか和田さんあたり?」  協力かよ、思わずオレは噴き出した。  悲しさを通り越し苛立ち始める気持ちをどうにか押さえ込む。今までこんなに食い下がる友人を見たことがなかった。  「いいよ、協力なんて」 「なんだよ俺の時は聞き出したくせに自分の時は言わんの? 友達だろ?」  じれた友人が吐き捨てた言葉にオレの忍耐が敗れた。 「オレが聞き出したわけじゃないもん、小滝と村田だろ。大体友達友達って、そういう事言わないと友達じゃないわけ?」 「……俺は昭介のことを知っておきたいだけで、」  どういうつもりなのだろうか。何でも知っておかなきゃならない関係じゃない。 「知っておきたいってなに? 知れば満足? 教えてもいいけど、困るのは自分だよ」  睨み付けた先の友人は怪訝な顔で首を傾げた。 「困るって何? いいから教えろよ」 「オレの好きな人は男だよ。女じゃない、岡島さんでも和田さんでも衛藤さんでもない」  言葉の出ない友人にオレはほくそ笑む。 「ほら、困るだろ? 誰にだって言いたくないことの一つや二つあるんだよ。干渉しないで」  分かっていたけど目を見開いている友人に傷付いている。落胆を隠すためふん、と顔を背けた。
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