朝はもうすぐ

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 自転車置き場のいつもの場所に自転車を止めて一階の角を目指す。  そこが友人の城なのだ。  「昭介」  後ろから呼ばれて振り向くと親切な友人がジャージにフリースで立っていた。  寒そうに肩を竦めている。よく見るとちょっと震えている。 「なんで外に……あ、ゴミの日か」 「おー、あ、待ってな、今開ける」  ふにゃっと笑ってオレを追い越した友人はうっすらタバコの匂いがした。 「早かったな、今日」  鍵を開けながら言う友人はなんか様子が違う気がする。  いつもの顔だし、いつもの笑い顔だし、いつもの口調だけど……なんだか違和感がある。  言葉の『間』が変に感じたのか。  鍵を開けて「入れよ」という感じも違う。  いつもはオレを先に入れてくれるけど今日はさっさと先に入った。  なんかあるぞ、俺の勘がこそっと囁く。  急いで友人の後に続くと一目散に居間のテーブルに向かう焦りを帯びた背中から斜めにずらしたオレの視線がそれを捉えた。   
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