朝はもうすぐ

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「昭介、さっきの事だけど、」 「……ごめん、嘘嘘、嘘だからもう忘れて」  友人が口を開いたのはオレがベッドに入って二十分は経っていた。オレの沸騰していた脳内も収束をみせ、その後やってきた焦燥や羞恥、後悔、絶望など様々な感情と戦っていた。 「嘘じゃないだろ。いや、……ちょっと時間くれないかなと思って」 「時間?」 「昭介の事考える時間」  オレは緊張状態で硬くなった身体を無理矢理動かし、部屋のほうを向いた。ごくりと喉が鳴る。   「考える余地があることなの?」 「うん」 「……そう、……そうなんだ」  ぎゅっと瞑った目から涙が零れてきた。  なんで泣いてるんだろう、自分の事なのに分からない。  でも今、オレは確かに期待してる。自分で自分が情けない。  単純に、自分の事を考えてもらえることが嬉しい。女の子と同じラインに立てているようで嬉しい。  口先だけそういったのかもしれないのに、そう思ってもやっぱりオレの中は喜んでいる。  布団の中で丸くなる。暖かくて気持ちいいのにオレはそれから全く眠れなかった。
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