朝はもうすぐ

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 友人はオレを見つけると何故か立ち上がってすぐ座った。  二人掛けの小さなテーブルを前に、身体のでかい男が小さくなって座ってるからなんとなくおかしみがある。 「お待たせ」 「ごめんな、急に呼び出して、」 「うん、どうしたの? 今日帰るんでしょ?」  オレが座るとすぐに店員が寄ってきた。目の端に俯き加減の友人が顔を上げる姿を捉えた。どうかしたのかなと思うけれどまず注文しないとちらちら入口を見ながら待っている店員にイラつかれそうだ。  キャラメルラテと迷って結局ホットのカフェラテを注文する。いつも一通り迷うのだけどほとんどの場合カフェラテになる。 「あ、俺、言ってたっけ、帰るの」  店員が離れるのを待って友人が身を乗り出し聞いてきた。 「うん、まえに聞いてた。んで何? ……もしかして……返事、とか?」 「いや、ええと……違う、ごめん」  緊張して上目で窺う事しか出来なかったけれど、違うと聞いてホッと息をつく。いやどもこの首の皮一枚繋がっている気分のまま年越し年明けを迎えるのもどうなんだろう。 「んじゃ、なに?」 「いや……」  友人はかっと顔を赤くした。
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