朝はもうすぐ

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「……そろそろ出ないといけない。電車の時間が」 「え? もう? ……あ、や、昼過ぎって言ってなかった?」 「予約するのすっかり忘れてて午前中の切符しか取れなかったんだ」 「そうなんだ」  うんと頷いた友人と店を出て、駅に消えていく友人の背中に手を振った。  小さくなってゆく友人の後頭部を見ながら正直、会いたいと思ってなかったんだけどな、と思う。  どんなにいい方向に考えようとしても十中、十、振られる予想が付くから。  でも誘うメールが嬉しくて飛んできてしまった。  寂しいだろうと言われたけれどこれも正直思ってなかった。  帰省している間は返事もないだろうからゆっくり出来るなあなんて思っていた。  でも今見えなくなった背中が恋しくて寂しく思う。  その場に立って、友人のいなくなった方向をじっと見ていると後ろから人に押された。 「すみません」  綺麗な女の人が歩みを止めず少し振り返る。  慌ただしいこの時期の駅にぼさっと立ってるほうが悪い。オレは頭を下げて反対方向の自宅に向かって歩き出した。  一月十日に友人はあの小さい城に帰ってくる。  あと十一日。
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