朝はもうすぐ

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 階段を降りてリビングに入ると明らかにデート仕様の姉がオレを見てにっこりと笑った。 「デート? 彼氏?」 「うん、行ってくるね」  肩下10センチほど、緩いウェーブがかかった髪を揺らして歩く姉はオレと似たような顔をしている。  玄関を出る後ろ姿にほんの少し胸がちくちくした。  ふわりといい匂いがする。  オレが女だったら、友人と付き合えたかな?  髪、ふわふわさせて、いい匂いさせてたら、オレも…… 「おい、どーした?」  振り返った姉が首を傾げている。 「あ、ううん、何でもない、」 「……なんかやな事でもあったかい?」  首を横に振る。 「そう? ならいいけど」  戻ってオレの頭をグシャグシャと撫でた姉はじゃあね、と出て行った。
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