朝はもうすぐ

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 目の高さまで目隠しのアルミ柵が立っているが隙間から洗濯物が見える。  干したまま帰ったのか、凍ってる絶対。  建物の左側から裏に回ると小さい駐輪スペースがある。  いつもの通勤用ぼろ自転車もここに置いている。  これはオレのじゃなくて、友人が卒業した先輩から貰ったものだ。  ちょうどその時期オレがバイトを始め、何度か借りたあと友人はオレにやると言った。  錆びだらけの自転車で走るとうるっさいんだけど愛車なので買い替えは考えていない。  そういえば期限の迫ったレポートがあるので自転車に乗って図書館にでも行こうかな。   鍵はダウンのポケットに入れっぱなしにしていて左右のポケットに手を突っ込む。右のポケットにあった鍵で解錠し 凍えながら前へ進む。  オレ、なにやってるんだろうなぁ。  頬と耳が痺れるほど痛い。  友人は今、何してるんだろう。  自転車に乗ってまでオレは友人を思う。
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