朝はもうすぐ

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 こぽこぽとやかんが音を立てたので火を止めた。  友人は荷解きに忙しく動いている。  オレは勝手知ったるこの台所で安いインスタントコーヒーを淹れる。  北向の台所は寒い。  吐く息が白い。  台所にエアコンはない、和室にはついているが、ここまで暖めることは出来ないようだ。  友人はブラック、オレは砂糖もミルクもたっぷり。でも今日はミルクが切れているので砂糖だけにする。  マグカップは形が違うし色も違う。これが色違いのお揃いならまるで同棲しているカップルぽくていいのにと思う。  カップを持って和室に移動するとスポーツバックは畳んであって、友人は紙袋の中を漁っていた。 「コーヒーでもどうぞ」  和室は少し暖かくなっていた。 「お、サンキュー」  友人は振り向きもせずまだ紙袋をごそごそしている。  テーブル越しに友人の手元を見ていたオレの目に、紙袋から出されたお菓子の包みがうつる。
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