朝はもうすぐ

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 オレを見る友人が泣きそうに見える。  自分の気持ちに精いっぱいで、オレは友人を置き去りにしていたのかもしれない。  胸がぎゅっと絞られた。  そういう風に思うのかと、改めて思う。自分の恋愛感情は、友人の立場になると『大事な友達』関係を揺るがす害あるものに映ってしまうのか。  離れれば自分は少し楽だ、振られた事を忘れて過ごせる。でもここに来たら、嫌でも今日振られたことをを思い出す。  それにオレのことだ、ちょっとでも優しくされたらまた好きな気持ちの寿命が延びてしまいそう。  それでも友人の言うことも理解出来る。  だから好きになってしまって申し訳なく思う。言うんじゃなかったって、思うよ。 「ううん、オレ達友達だもんね」  にっこり笑うと友人の醸し出す緊張感がふっと解けた。  どんな逆境でも、まずいい方向に考えを伸ばすことが未来を拓く道だと高校の時にどこぞの偉い人が講演会に来て言ってた。  この場合のいい方向って、どっちなんだろう。  うんと一度頷き作業を再開した友人を見ながら結構な時間そんなことを考えていた。
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