朝はもうすぐ

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「で? で? どうしたのよ」 「だからメールしたでしょ? 振られたの」 「うん、そりゃ聞いた、けどさ、なんでそんな、告白しちゃう事になっちゃったの」 「なんか、しつこく好きな人が誰か聞かれてつい言っちゃった……、みたいな」  まくしたてる新谷が突然口を瞑んだのでうつむけた顔を上げる。  新谷の向こうに店員がカフェオレを運んできている姿が見えた。新谷は背後の気配が読めるの、かもしれない。すごいと思う。  店員が離れるのを待って新谷がおもむろに口を開いた。 「なんでそんなシュチュエーションになるの、経験ないから分からないっ」  イケメンの部類に入る顔貌の新谷だが頬に手を当てる仕草はイケメンというより乙女だ。 「新谷くんがオレを好きだと思ってたみたいで」 「はぁ?」  目を丸くした新谷に、本当は自分もそう勘違いしていたことは秘密にしようと思う。  脇に置いてあったシュガーポットから山盛り二杯、カフェオレに投入する。いつも友人はこれを見ながら「太るぞ」と笑う。  事の顛末を説明すると、新谷は深くため息を落とした。 「なるほどね。……あたしが話の発端だなんて……なんか、ごめん」 「あ、ううん、もう色々切羽詰まっちゃって、言っちゃおうって自分でも思ったから」 「そっか、疲れたって言ってたもんね」  カップに口を付ける。甘いカフェオレは温くなっていた。
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