朝はもうすぐ

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「辛かったね」  低く呟く新谷に、オレは首を横に振る。 「振られたのは、確かにショックだったよ、だけど、予想してたから。……でもこれからを考えるとなんだかね」 「仲良かったからね」 「うん。今まで通りがいいって言われてさ、どうしたらいいのかなって思う」  ちらりと前を見るとハの字眉をさらに傾斜させた新谷くんがじっと自分を見ていた。 「今まで通りって、……難しくない?」 「それがそうでもないんだよ、普通。すごく普通」 「ええ? そうなの? そんなものなの?」 「うん。オレ達さすごく仲良いんだ、でもよく考えたらしょっちゅう一緒にいるけどたいして話してなかったんだよな、和也んちに居てもオレ、ゲームしてたり、テレビ見てたりで、そういや和也に彼女が出来たのも他の友達が二人でいるとこ目撃したって言って問い詰めてるとこにたまたま居合わせて知っただけだったし」 「そうなの?」  新谷の眉間がますます深くなる。 「だからさ、振られた事とかその辺りに触れなければいつも通りではあるんだよ。なんだかさあ、親友って思ってたんだけど違ったのかなあ、もやもや抱えたままでもいつも通りって。思ってたより、表面的な付き合いだったのかなって」 「……うーん。ううん、そんなこともないんじゃない、大事な関係だから大きな出来事があった時、変化が現れるまで時間がかかるんじゃないの? そういうの飲み込んで普通の時間を普通に過ごせるのが親友なのかも……いや、あたしにはいないから分からないけど 「そうかなあ」  オレは大きくため息をついた。
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