朝はもうすぐ

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「今日は大阪に出張だからちょうどいいわ」 「え、オレ見たかったよ」 「ダメダメ! もしかち合っちゃったらどーすんのよ、あたし藤ちゃんじゃ負けちゃいそうだもん」 「えぇ」  膨れたオレに新谷は手のひらをこちらに向けて揺らす。そして新谷はふと、ひとさし指を顎に当て目を天井へ向けた。 「うーん、でもどーかしら? あたし結構もてるからなあ」   ふふんと顎を上げた新谷くんは「藤ちゃん案外モテないかも」と言い放った。自分の容姿に自信が有るわけではないが、聞き捨てならない。 「えー、なんでー?」 「だってー、藤ちゃん綺麗だけどちょっと冷たそうだもん。見かけが、よ、あくまで」 「うぅ、オレ目はつってるけど、愛想いいし」 「いや、確かに愛想悪くないけど、なーんか腹に一物ありそうっていうか、近寄りたくない感じがねー、あら、なんでかしら?」  素直な性格だと自分では思っているのに腹に一物、なんてショックだ。振り返ってみると、よく話すのは村田と友人、そして目の前の新谷くらい。  まさか本当に、周囲にそう思われてるのか。  新谷は自分で言ったくせに考え始めた。 「オ、オレ、友達少ないの、そういう事なの? みんなで遊ぶのもそういえばほとんど村田経由だし、二人で会うのって、村田と和也と新谷くんくらい……う~、嫌われてんのお、オレ」 「ああ、やだ。そんなことないわよ! みんな藤ちゃん好きよ! ほんとに!」
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