朝はもうすぐ

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 テーブルに付きそうなほど頭を垂れたオレの肩を新谷がぽんぽんと優く叩く。 「ああ、なんでこんな話になっちゃったの? ごめんね、藤ちゃん! 近寄りたくないじゃなくて近寄せないって感じなのよ、そうそう、ほら顔もそこそこで、藤ちゃんスタイル抜群じゃない? それで小奇麗な格好してるもん。それにほら……」  調子よく話し始めた新谷はうんうんとと首を振ってたんだけどふと止まった。 「えーなに? もうこうなったら全部教えてよう」  「いやー、」と曖昧に笑う新谷にしつこく聞けば、新谷は苦い表情で口を開いた。 「ほら、里見くんといつも一緒だったからさあ、二人の世界っていうか、はた目から見ても仲良いからあんたたち、入っていけない感じはしたわよね。ああもう、ごめん、藤ちゃん今日行くわよ、いい男に出会おう!」 「あ、うん、それなんだけど……、まだいいかな、なんか気力がなくって……」 「えー、そうなの? そっかあ、うん、まあ、そうね、ゆっくりでいいのよね」 「うん」 「あ、じゃあさ、飲みにでも行きましょうよ、パーッとね」 「うん、そうだね」  新谷は早速スマホを取り出し「ここに行きたいのよね」と、ここから程近いニューオープンの居酒屋のページを開いて見せてくれた。  聞けば新谷は行きたいお店を見つけたらスマホに情報を貼り付けているという。オレはマメなタイプじゃないので新谷の細やかさに感心しつつ、新谷のスマホを覗きこんだ。  他にもケーキ屋さんが何軒も入っていた。それは後日一緒に行こうと約束した。
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