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なんだか寒さが増したようでオレは身震いした。
ああやって、誰かと寄り添って歩いてみたいと、思う。
オレのような人が集まる所なら、一人くらいオレを気に入ってくれる人がいるかもしれない。
もう二度と、普通の、女の人と付き合う人は好きにならない。
強く強く心に誓う。
「おい、昭介……って、なに、腹でも痛い?」
脇道から出てきた友人とばったり出会うなんて、運命的……なんてことはなく、もうすぐ目の前が当のカフェだ。
今日も友人はジーンズと黒のダウン、黒のスニーカー。
サイズの大きな友人にとって、デザインは二の次らしい。ダウンも今は身体のラインに沿ったものが多いのに友人のは筒状だ。
「あ、ううん、ちょっと寒かっただけ」
「また腹壊したのかと思った。寒いの弱いだろ」
「大丈夫、大丈夫」
お腹を叩いて見せると、友人は苦笑いを浮かべた。
「叩くのやめろよ、痛くなるぞ。あ、そうそうこれな、ありがと」
「うん」
差し出した手にはオレのあげた手袋。
使ってくれて嬉しいような、なにも気にされていない感じが切ないような複雑な思いで本を受け取る。
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