朝はもうすぐ

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 冷たい風が頬を撫でる。寒いけれど、火照った身体はそれを心地よく感じている。  ふと、自分の身体がゆらゆらと揺れている事に気がついた。 「……ん」 「お、起きたか?」  耳に低くて優しい声が届く。身動ぎすると「大丈夫か? もうちょっとだから我慢しろよ」とまた優しい声がかかる。  ゆっくり閉じていた目を開ける。  まぶたはやけに重く、半分しか開かない。  ぼやける視界にいつものコンビニの光が横切る。  小さく上下する身体は首も上げられないほど倦怠感がある。そして何故か、身体の節々が痛い。  顔に当たるナイロンからはよく知っている匂いがした。 「……かず、や?」  自分でもびっくりするほど声が枯れている。 「ん? 吐きそうか?」 「……あれ? な……んで?」
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